ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜


 女性陣は、家庭がある人もいるため、一次会で解散。また女子会しようね!と盛り上がっていた。
 二次会はそれぞれ、というのは普段の飲み会と変わりないらしい。
 俺は誘われたけど、疲れが取れてなくて、と断った。半分は本当。
 もう半分は、今日のミッションのため。

「本田さんは、帰るんですか?」
 声をかけると、千波さんが振り向く。
「うん、楽しくて飲み過ぎちゃった〜」
 あはは、と笑う。
「帰るなら、一緒に行きましょう」
「そうだね」
 名残惜しげに立ち話をしている人達に声をかけて、駅に向かう。
「盛り上がってましたね、女子会」
「うん、久しぶりに話したよ。やっぱりフロアが違うと顔合わせないもんね」
「俺も、下の人達と話せて良かったです」
「ああ、須藤君も楽しそうだったよね。良かったね」
 久しぶりに、2人で笑った。
 幸せで、舞い上がってしまいそうだった。

 電車を降りて歩き始めると、千波さんが鞄をごそごそ探って、小さい紙袋を出した。
 そのまま、俺に差し出す。
「これ、お土産」
 ぽかんとしてしまった。
「帰省のお土産なんだけど……須藤君?」
「あっはい、ありがとうございます」
 受け取って、紙袋をしばらく見つめる。
 足も止まってしまっていた。
「大した物じゃないんだけど、いつものお礼」
 そして、いつもの笑顔をくれる。

 ずっと見たかった千波さんの笑顔。
 俺は幸せをかみしめた。

 自分も渡す物がある。
「俺も、お土産です」
 千波さんがくれたのよりも、少し大きい紙袋を渡す。
「あれーせっかく恩返ししたと思ったのに、また返ってきちゃった」
 笑いながら、受け取ってくれた。
 中を見た途端に、パッと笑顔になる。
「あっ、これあのハンカチの子だ。バッグ?わっ可愛い!」
 バッグを取り出して見ている。可愛過ぎる、この人。
「俺も、見ていいですか」
 もらった紙袋を示すと、千波さんははにかんだ。
「もちろんだよ。ごめんね、私ばっかりテンション上がっちゃって」
 俺は笑顔で答えて、紙袋を開けた。
 中には、眼鏡のソフトケースが入っていた。草木染めの、落ち着いたグリーン。千波さんの色だ、と思った。
「須藤君っていったら、眼鏡しか思い浮かばなくて。いつもかけてるから、使わないかもしれないけど……」
 千波さんは恥ずかしそうに下を向いた。

 俺を思い浮かべて、選んでくれた。
 そう思ったら、もう舞い上がるしかない。

「嬉しいです。大事にします」
 そう言うと、千波さんは顔を上げて、笑った。
「良かった」
 千波さんは、もう一度バッグを見た。
「私も、凄く嬉しい。ありがとう」
 2人で笑い合う。

 幸せだ。
 この幸せを、ずっと手に入れるために、俺は頑張るんだ。

 新年の誓いを新たにした。




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