ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜


 井上君おすすめのハンバーグを食べに、お店に向かう。
 駅の向こう側に出ると、道幅が狭くなって、その割には車が通る道で。
 須藤君は、車が通る時にはさりげなく私をかばってくれる。
 今までは、先輩に気を遣ってくれているだけだと思っていたけれど、女性として守ってくれているんだとわかった。

 お店は、知らないうちに予約してくれていて。

 なんだか、凄く大切にされている気分になる。
 嬉しい。

 そのことのお礼を伝えていたら、顔が熱くなってきた。多分赤くなっている。
 恥ずかしくて、須藤君の顔が見られない。
 目を伏せていたら、須藤君の小さな声が聞こえてきた。

「紳士、とかではないです、よ……」

 余りに声が小さくて、思わず聞き返す。

「え……?」

 視線を上げると、須藤君はまだ赤い顔で、口元を手で抑えていた。
 だから聞き取りづらいのかな。
 須藤君は、そのままもごもごと続けた。

「……本田さん、だから……」

 私、だから……?

 その続きが聞きたかったのに。

「お待たせしました。セットのサラダです」
 店員さんが明るくやってきて、話は終わってしまった。
 ごまかすように笑う須藤君に、話を蒸し返すことはできなかった。

 ハンバーグは凄くおいしかった。
 他のメニューも豊富なので、今度来たら違うものを食べようと思った。

 今度来る時も、須藤君と一緒に来られたらいいな、と思った。



< 69 / 130 >

この作品をシェア

pagetop