ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜


 連休は、俺は去年と同じで家にいる予定だ。
 千波さんは、帰省するんだと言う。
 またケンさんの写真をたくさん撮ってくるんだろうな。
 帰省の予定をにこにこ話す千波さんを、俺はあったかい気持ちで見つめた。



 連休明け。
 千波さんは、お土産のお菓子を配っていた。
 ぐるっと一回りして、最後に久保田君のところに来た。
 久保田君は、この前まで小田島さんがいた席にいる。俺の真向かいの席だ。
 小田島さんは、西谷さんを挟んだその隣、磯貝さんがいた席になっていた。
「久保田君、これ、帰省のお土産。良かったらどうぞ」
 千波さんは、緊張している。声が堅いし、仮面の笑顔だ。
 久保田君は、にこっと笑って受け取った。
「ありがとうございます」
 久保田君にお土産を渡すと、千波さんは俺の後ろを回って自席に戻る。
 俺の真後ろを通る時、ホッと息をつくのが聞こえた。
 まだ緊張してるんだな。
 去年の連休明けには、俺はいつもの笑顔の千波さんから土産を受け取っている。
 確かに、去年とは態度が違うようだ。
 席に座った千波さんが、俺にも土産を出した。
「須藤君も、はい」
 千波さんの本物の笑顔。
「いつもありがとうございます」
 俺も笑顔で受け取る。
 視線を感じた。
 久保田君が、こっちをじっと見ている。
 俺がその視線に気が付くと、スッとパソコンに向いて、作業を始めた。
 その表情は、いつもと変わらない。
 なんだったのかよくわからないけど、とりあえず考えるのをやめて、仕事を始めた。



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