ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜
一歩近寄って、千波さんの手を引く。
全く抵抗無く、千波さんが俺の胸に、ぽすっ、と飛び込んでくる。
同時に、ふわっといつもの髪の匂いがした。
背中に手を回して、抱きしめる。
何回、夢に見ただろう。
やわらかくてあったかい、本物の千波さん。
抱きしめる手に、力を込める。
夢じゃない。
その感覚が欲しくて。
と、千波さんが身じろぎした。
いつのまにか、大分力が入っていたようだ。
「すいません、俺、つい……」
力を緩めて、千波さんの顔を覗く。
「大丈夫ですか?」
千波さんが頷く。
俺の腕の中で、顔を赤くして。
駄目だ、可愛すぎる。
もう一度抱き寄せる。今度はそっと。
千波さんの手が、俺の背中に回った。
千波さんが、俺の腕の中に、ちゃんといる。
俺のことを、抱きしめてくれている。
ふわふわの髪をなでる。
顔を見ると、千波さんは目を閉じていて、気持ち良さそうだ。
手をほっぺたにすべらせる。
あの時触れたのと同じ。すべすべして気持ちいい。
千波さんが、目を開けた。
ほっぺたの手でちょっと誘導したら、俺を見上げた。
潤んだ目、赤いほっぺた、ちょっと開いた唇。
もう、可愛すぎて、我慢できない。
顔を寄せる。
息がかかるくらい近くに。
「いい、ですか?」
千波さんが頷く。
可愛くて、愛おしくて。
キスをした。