好きは色づく花。
春
「今年も、スミレが咲く時期かあ…」
中庭の花壇に咲くスミレの花は、見頃を迎えようとしていた。
そして私は私と同じ名前の花に水やりをする。
何故私が水やりをしているかと言うと、部活動の一環であるから。
そして今日は私が当番の日であるから。
「あ、菫がスミレに水やりしてる」
花壇から視線を上に向けると、校舎内から窓枠越しに私を見る人の姿があった。
「あ、葵。何して…って、そういえば今日、日直だったっけ」
彼は上嶋 葵彼とは生まれたときからの付き合いで、いわゆる”幼馴染み”という関係性である。
親同士が仲が良いのだ。
「そう、ちょうど職員室に日誌を届け終えたところ」
「そっか、お疲れ様。これから部室?」
「そのつもり。楓と杏も先に集まってるよ。もちろん部長もね」
楓と杏も幼馴染みだ。
楓は葵と同じで生まれたときからの付き合いだ。
杏は小学校3年生の頃に転校してきて、それからの付き合いだが、とっても仲が良い。
高2の今年は全員同じクラスだ。
「水やり終わったらすぐ行くね」
「もう終わりそうでしょ?下駄箱で待ってるよ」
ふっと微笑む葵。
「ありがとう」
じょうろを片付けると急いで下駄箱で靴を履き替え、葵と合流する。
「じゃあ、行こうか」