好きは色づく花。
翌日の放課後。
今日は写真部としての活動で、茶道部と剣道部の部活動記録を撮影することになった。
我が高校は部活動に力を入れているらしく、活動記録などを定期的にホームページに掲載したり、近隣中学などに月報という形で配布している。
そのために使われる写真を私たちが撮影している。
他にも学校行事でもよく駆り出される。
文化部の中では忙しいほうなのかもしれない。
まあ、運動部に言ったら怒られるだろうけど。
「今日は榎本さんはお休みですか。そうですね…じゃあ昨日と同じで相沢さんと飯倉くん、僕と上嶋くんで別れましょう。僕たちは剣道部に行ってきますので、茶道部をお願いします」
杏は家族と食事だそうで部活は休むと教室で言っていた。
杏の家は親戚関係が広く、定期的に集まりがあるみたいで大変そうだ。
「わかりました」
部室の本棚の隣にある、いやに丈夫そうな棚(防湿庫だそうだ)から、これまた高そうな一眼レフカメラを持ち出すと、私と楓は茶道室へ向かう。
茶道室は私たちTSE部と同じ部室棟の1階にある。
他の教室と変わらない引き戸を開けると、和風な茶室へと上がる玄関のような場所がありそこで上履きを脱ぎ、小さな戸をそっとくぐれば畳敷きの茶室が現れる。
茶道部以外は殆ど使わないので知らない人も多いが、ここが学校だとは思えないほどかなり本格的な茶室になっていて、室内に入るだけで背筋がピンと伸びる。
「失礼します、TSE部です。撮影に来ました」
少し早く来過ぎたようで、茶道室に入ると外部顧問として来ている着物姿の女性が
準備をしていた。
「あら、今日は撮影される日でしたね。ごめんなさい、まだ準備中で。少し待っていただけるかしら」
部員はどうやら別室で着付けをしているみたいだ。
楓と隅で静かに待っていると、しばらくして顧問の鶴田先生が着物姿で入室した。
「門間先生、準備が整いました」
「そうですか。では始めましょう」
そしてひとりずつ茶室へ入室する。
その中にひと際目立つ、水川さんの姿があった。
そういえば水川さんって茶道部だったっけ。
和服も似合うなあ…
と水川さんを見ていると、ぱちりと目が合う。
水川さんはにこりと微笑んだ。
茶の席が始まると、静かな空間の中で私たちは活動の様子を写真に収めた。