好きは色づく花。
一通り席が終わると、作法の指導が行われる。
「指導の前に、お二人もよろしかったらお茶と菓子をどうぞ。作法は気にしないでいいから」
こっちのほうが飲みやすいと思うわ、と抹茶ではなく煎茶を出してくれる。
「ありがとうございます」
「いただきます」
指導する様子を数枚写真に収めた後、お茶とお菓子をいただく。
「ん、おいしい!」
「本当だ。多分これ華月堂のだ…うまい」
楓は意外と甘党で、特に和菓子が好きだからお店にも詳しい。
一口食べてお店を言い当てるくらいには好きなのだ。
その後しばらくして茶道部の活動は終わった。
「飯倉くん、相沢さん!」
そろそろ部室に戻ろうと挨拶をして廊下に出ると、後ろから水川さんに声をかけられた。
どうしたんだろう、と水川さんに視線を向ける。
「あの…今日撮ってた写真のことなんだけどね、私が写ってる写真はあんまり掲載してほしくないなって…」
「ああ、分かった。極力選ばないようにする。ただ、集合写真とか多少映り込んでるのを省くのは難しいけど」
「それで全然いいよ。メインで写ってなければ」
「了解」
「ありがとう」
チラッと私に目をやり、それじゃあ、といって茶道室へと戻っていった。
「水川さん、写真嫌いなのかな?」
「目立つのが嫌いなんだって。彼女いるだけで目立つし、やっかみもあったんだろう」
やけに水川さんに詳しい。
楓ってそんなに水川さんと仲が良かったっけ。
少しだけモヤッとした気持ちになるのは…なんでだろう。