好きは色づく花。
楓と水川さんが行ったあと、今度は清水先生と2人きりになる。
「先生、こんな感じでどうですか?」
「ああ、それで大丈夫だ。ところで…」
真面目な顔をした先生が私をまじまじと見つめる。
その真剣な眼差しに緊張が走った。
「お前ら付き合ってないのか?」
「付き合ってません!」
「いやさ、別に"楓"じゃなくても上嶋とか」
先生が突然"飯倉"ではなく"楓"と呼ぶ。
それは、楓が先生にとって"甥っ子"になるからだ。
苗字が違うのは、楓の母の弟だから。
そして今は先生としてではなく、楓の"伯父"として話しているからその呼び方なのだ。
「先生、ほぼ毎日私たちと顔合わせてますよね?付き合ってるように見えますか?」
「見えないな」
「それじゃあどうして…」
「いや、さっきみたいな場面でときめいたりしないもんかと」
そりゃあ、ドキッとしたけど、それが恋かと言われると分からない。
だって、生まれた時からずっと一緒なんだもん。
「ふうん、伯父としては楓と仲良しこよしになってくれたら〜とか思うが、いろいろと複雑そうだからな。そこまで俺が突っ込む事でもないか。とにかく、頑張れよ」
ポン、と肩をひと叩きする。
「はーい、貴史オジサン」
「おお、久々だな、その呼び方」