聖人女王の転生譚
「アーシア大陸の魔女に関する歴史書だ」
「魔女、ですか。おとぎ話ではないのですか?」
「俺もそう思う。だがどうにもこの魔女という存在がアーシアの列強を陰で操っていたらしいという論文が発表されて歴史がひっくり返るかもしれないと」
来年からリシャールは貴族の子息令嬢のための学院に通うことになる。
といっても、家庭教師が主流なこの国で学校というのはあくまで平等な社交性や情報収集の隠れ蓑であるし、子供といえど貴族は貴族。
そういったものはよく理解しているはずである。
しかも城から通うのだし、授業らしいものも週に三度、午前中か午後のどちらかだけ。
とはいえリシャールに会う頻度は確実に落ちるだろう。
なんせ今は毎日朝から夕方までほとんどの時間を共にしている。
自分が次期王妃の候補に挙がっているのは知っているが、歳の近い令嬢たちと過ごしていたら気持ちがそちらに向くこともあるかもしれない。
最終的に結ばれると知っていてもいい気持ちはしないものだ。
「クロエ、どうした?もしかしてあまり関心がなかったか?」