聖人女王の転生譚
「かつて某国で、処刑された女王がいる」
「……」
「美しく聡明な女王は、どういうわけか国民の反乱によって斬首によってその一生を終えた。背景には女王を貶めようとした王室関係者の影があったと聞く。……それで」
ひどく言いにくいことなのだろう。その女王について彼が語るというのは。
でもどうして、その某国の女王とはきっと私のことでルネならともかくリシャールはなにも関係ない。
<わたしたち>はあの斬首からおよそ十年もあとの世界に生まれているのだ。
リシャールの祖父、前国王であればなにか因果があるかもしれないが(私は死んでいるので知らないものの)リシャールがこんな顔をする理由などどこにもないではないか。
「信じて、もらえるかはわからないが、自分がかつてその女王の騎士であった……夢を見た。ただの騎士ではなくて、きみのように幼馴染としてずっと、そばにいた」
「でもそれは」
「わかっている、夢だと、思う。だがわからない、夢だとして本人しか知らないであろう約束を私は夢で聞いてしまった。もし、いつか、そんな世界があるならばと女王が言うんだ。その微笑みがひどく君に似ていた。来世で、もし出会えたなら今度こそ手を取って生きていきたいと」