聖人女王の転生譚
「そなたの人生は大変清く、善い人生だった」
「お言葉ながら、なぜ、なぜ私はあのような最期と相成ったのでございましょう。私はなにが至らなかったのでしょう、私のせいで、私の騎士は、ルネは」
「おお、おお、そうだ、そうだ。まずその説明をせねばならない。面を上げよ」
女王たるもの、感情を見せてはいけない。
自身が人前で泣くことなど許さなかったはずだがどうにも今は無理そうだと唇を強く噛み締めた。瞬きなどしていないのにぼろぼろと大粒の涙が零れ落ちていく。
ああ、でも、そうか。私はもう女王でもなんでもないのだから、ルネを思って泣いても誰もなにも言わないのではないか。
女神マナナーンがそっと近づいてきて肩を抱いてくれた。
「アリスタ、そなたの行いが間違いであったことなど一つもない。そなたは人でありながら一度も失敗や間違いを犯してこなかったのだ」
確かに昔からやたらと「ツイている」と感じることが多くあった。
怒られたこともなければ、失敗したこともない。それでも周囲はそうはいかない。
幼馴染のルネは大器晩成型であったのでよく叱責されている場面に出くわしたものだ。
自身は成功し続けていたにも関わらずアリスタは、今日は運が良かっただけ、明日は思わぬ失態があるかもしれないと思いながら生きていた。
結果としてその叩いた丈夫な石橋が彼女が聖人たる礎になったわけだが。
「間違ったのは民草のほうなのだ」