聖人女王の転生譚
「かの騎士は、そなたに近しい善人であったため死んだ」
「騎士の死もまた損失である」
「あの国にあれより優秀なものはこの先二度と生まれない」
「聖人にはなれなかったがかの騎士もまた善人であった」
ああ、良かった。彼の死もまた無駄ではなかったのだ。
自分のせいで巻き込まれたのだと思うと心が痛いが、それでも生き残ってその後の人生を不幸のどん底で生きるくらいなら死んでしまったほうが幸福なのかもしれないと思う。
今までと、死の間際で彼が何を思っていたかは知るところではないけれど。
「アリスタ、我々から提案が二つある」
「は、ご随意に」
「ひとつ、このままここに留まり新たな神となる」
「神は絶対ではない、世界が変わっていく度に死に、再度生まれる存在だ」
「そなたにはリアンノンの名を授けよう」
まさか死んでから神になるとはだれが思うだろう。
神というのは生まれたときから神なのだと思っていたがどうやら違うらしい。
人間として生きていたころには知りえない話に興味深く耳を傾けてしまった。
流転が万物の基本である以上、それは万物を作り上げた神とて同じであるということらしい。
隣にいるこのマナナーンは何代目のマナナーンなのだろう。