転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

（……それにしても。レヴが私とリリザと同じ見習いなんて、ゲームにはなかったことなのに。確か今年の見習い一年生は五人。私とリリザ以外は全員モブで、名前も顔もなかったはずだけど……そのモブのひとりがレヴだったってこと？　でもゲームでサマラが他のモブと親しくしてる描写もなかったし……？）

自分の知っている『魔法の国の恋人』の内容とは違うことが起きているようで、サマラは首を傾げる。
単なる記憶違いか、それとも……自分がゲームのサマラとは違い、ディーやカレオと良好な関係を築いたせいで、何かが変わってきているのだろうか。

そんなふうにサマラが思い悩んでいるときだった。

「あ～ん！　遅刻、遅刻～！」

そんなふた昔前のアニメヒロインみたいな台詞と共にバタバタと廊下を駆けてくる足音が聞こえたかと思うと、出入り口のドアがガラッと開いた。

「ラッキー！　間に合った～！」

小鳥が囀るような可愛らしい声。その存在が特別であることを示すかのような太陽色に輝く髪と空色の瞳。長い睫毛を携えた目は大きくて煌めいており、愛らしい顔を活き活きと魅せている。

研修室へ入ってきた少女に、誰もが注目した。強烈に惹きつけられる少女の可憐さに。或いは――ついに現れた『主人公』の登場に。

（リリザ……！！）

サマラは思わず唾を飲む。いよいよ主人公が登場してゲームが始まったのだと、緊張が走った。

（落ちつかなくちゃ。リリザには必要以上に関わらない。でも冷たい態度も取らない。まるでモブのように彼女から存在感を消すのよ、サマラ）