転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
倒れたリリザの前に立っているサマラ、そして手を差し伸べるディー。状況は違うのに、構図はゲームのものと全く同じだった。

「大丈夫か」

「はい……、ありがとうございます」

差し出された手を取って、リリザが立ち上がる。その光景をサマラはただ立ち尽くして見ていた。

(な、なにこれ? 違う行動をとったはずなのに、ゲームと同じ流れになった? いや、違う! だって私はリリザを突き飛ばしてない、助けようと思って彼女の前に来ただけだもん)

悪いことなど何もしていないはずなのに、サマラのこめかみに汗が流れる。得体のしれない後ろめたさが胸に湧いてきて不快だ。

立ち尽くしているサマラに、ディーが視線を向けた。心臓が掴まれたみたいにギュッと痛む。

「あの……こ、これは」

しなくてもいいはずの言い訳が勝手に零れる。今にもディーの口から『素行の悪いものは帰ってもらっても構わんのだぞ』という台詞が飛び出しそうで、恐怖と緊張で足が震えだした。
……けれど。

「どうした、そんなところに突っ立って。具合でも悪いのか? 顔色が悪いぞ」

ディーはそう言ってサマラに近づくと、手を伸ばし青ざめている頬を撫でた。その眼差しは娘を純粋に心配する気持ちに溢れている。

サマラはハッと我に返った。どうしてディーが何もしていないサマラを責めるなどと思ったのだろう。

「あ……だ、大丈夫です。ご心配ありがとうございます。緊張していて、少しぼんやりしてしまっただけです」

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