転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
高身長のディーに比べ、レヴはまだ成長途中だ。十センチ以上ある身長差で目線の高さまで持ち上げられ、レヴの爪先が宙に浮く。
胸ぐらを掴まれ苦しそうにしながら、レヴがディーを睨みつける。その途端、周囲の地面から木々の根が飛び出しディーに向かって絡みつこうとしたが、体に触れる前に根は腐ったように朽ちてしまう。

「無駄だ。お前は俺を超えることは出来ない」

「ちくしょう……っ、放せ……!」

「二度とサマラに近づかぬと、大地の精霊に誓え」

「嫌だ……! もうあんたらの言いなりになるのは嫌だ……っ! 俺は、自分の意志で生きたい……っ、サマラと一緒にいたい!」

切々と訴えたレヴの言葉を聞いて、ディーの顔色が変わる。かろうじて抑えていた怒りを露わにし、眉を吊り上げた。

「……自我を持ちすぎたようだな。身の程を知れ。過ぎた望みはお前自身に災いをもたらす。それにサマラを巻き込むというのなら、容赦はしない」

ディーが、レヴを掴みあげているのと逆の手を握り込む。
何故かわからないけれど、サマラは恐ろしい危機感を覚えた。無我夢中でディーに体当たりし、レヴを掴んでいる手を離させようと縋る。

「やめて! レヴを離して! お願いお父様! お願い!」

サマラの必死の懇願に、怒りの形相に染まっていたディーの表情がわずかに和らいだ。
ディーはレヴを一瞥すると胸ぐらを掴んでいた手を離し、彼が激しく咳込むのにも構わず背を向ける。
そして今度はサマラの手を掴むと強引に引いて歩きだした。

「お父様、待って……お父様……!」

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