転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
手を引っ張られ、サマラは転びそうになりながら歩くがディーは止まってくれそうにない。
地面にへたり込んで咳込んでいるレヴのことが気になって何度も振り返ったが、駆けつけてあげることはサマラには出来なかった。



サマラはディーのことが好きだ。
初めは生き延びるために彼に好かれようと媚びを売ってきたが、いつからか本当に父親として慕うようになり、今では世界一好きな存在と言っても過言じゃない。もちろん尊敬もしている。

けれど今、サマラは初めてディーに激しい反発を抱いた。こんなに彼のことがわからなくなってしまったのは初めてだ。

「どうしてレヴと話をしてはいけないのですか!? 理由を教えてください!」

「理由など知る必要はない。お前は俺の言うことを聞いていればいいんだ」

アリセルト邸の居間に、親子の言い争う声が響く。
あれから屋敷に無理やり連れ帰って来られたサマラは、ディーのやり方があまりに乱暴なことを訴えた。いくら言いつけを破ったとはいえ、レヴを傷つけるのは幾らなんでもやりすぎだ。
ディーのことは分別のある理性的な大人だと思っていたぶん、サマラのショックは大きかった。

しかしいくらそれを訴えても、ディーの言うことは「あいつに近づくな」の一点張りだ。話にならない。
レヴはただの友達で、やましい関係ではないと説明したところで同じだった。

これ以上ディーを怒らせず、今までのようにレヴとの交流は密かに続けるのが得策だとわかっていても、今回ばかりは反抗せずにいられなかった。
大切な友達をろくな理由もなく傷つけられて黙っていられるほど、サマラはおとなしくない。

< 147 / 200 >

この作品をシェア

pagetop