転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
「……私はお父様のことが好きです。けど、レヴのこともお友達として同じくらい大切なんです。納得できる理由を教えてもらえないのなら、私はレヴとの交流をやめません!」

サマラがそう言いきると、ディーが突然椅子から立ち上がった。そしてベルで家事妖精を呼び、命じる。

「サマラの荷物をまとめろ。サマラを領地へ送り帰す」

その言葉に、サマラは耳を疑った。座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、ディーに詰め寄る。

「どうして!? なんでそんなことをするの!?」

ディーの腕を掴み必死の形相で訴えるも、彼は目すら合わせようとせず言い放った。

「お前が言うことを聞かぬなら物理的に引き離すしかない。アリアン州の屋敷に帰れ」

あまりに横暴なディーの言葉に、ついにサマラの堪忍袋の緒が切れた。

「……っ、お父様の馬鹿! わからずや! お父様なんか嫌い!」

叫んで、サマラは居間を飛び出した。怒りで頭が混乱していて、冷静な判断が出来ない。
今はただ、ディーと離れたかった。横暴な父親の監視下から逃げたかった。

廊下にいた執事が止めるのも構わず、サマラは玄関を出ていく。
せめてお財布くらい持って出ればよかったと思ったときには、王宮の敷地を出て街の大通りまで走りついたときだった。

時間は夜の九時。大通りには魔法石を使った外灯が立ち並んでいるので暗くはないが、店はどこも閉じており人影はまばらだ。

通り過ぎる人たちがチラチラとこちらを見ていることに気づき、サマラはハッとする。
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