転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
サマラの格好はひと目で貴族とわかる上等なものだ。こんな時間に貴族の年若い娘がひとりで外をフラフラしているなどありえない。すぐに人さらいに目を付けられるか、警官が駆けつけてくるのは自明の理だった。

(どうしよう……行く宛てなんてないのに飛び出してきちゃって、無謀だったな……)

今さら衝動的だった自分の行いを反省するも、屋敷に戻ろうとは思えなかった。今はディーに会いたくない。

途方に暮れながら歩いていると、一台の大型馬車がサマラの横で停まった。小窓が開き顔を出してきた人物に、サマラはギョッとする。

「サマラじゃない! 何してるの、こんなところで?」

それは、おめかしをしているリリザだった。
よく見ると馬車は王室のものだった。おそらくバレアンとオペラでも観てきた帰りなのだろう。

よりによって一番会いたくない相手に会ってしまったと、サマラは苦虫を噛み潰したような顔になる。

「こんな時間に護衛も付けずにひとり? どうして?」

「うん、……ちょっとね」

適当に相槌を打ってやり過ごそうとするが、リリザは「あーっ! もしかして家出?」と核心を突いてきてしまう。
サマラが一瞬うろたえた顔をすると、リリザは嬉しそうに微笑んで馬車から降りてきた。

「あはは、そうなんだあ。サマラってば父親にべったりだと思ってたけど、一応反抗したりもするのね。ほら、乗って。リリザが匿ってあげる」

そう言って腕を掴んできたリリザに、サマラはもちろん警戒する。いくら困っているとはいえ、彼女の世話になりたくはない。しかし。

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