転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
「あの物陰にいる男、ずっとサマラのこと見てるよ。このままここでひとりでいたらマズいと思うよ~」

リリザにこっそり耳打ちされて後ろを振り返れば、確かに壁の影にこちらを見ている男の姿が確認できた。背筋を冷たくしたサマラは、おとなしくリリザに腕を引かれるまま馬車へ乗り込んだ。

「……ありがとう」

「どういたしまして~。リリザ、お友達のピンチを黙ってられないから」

馬車にはリリザと護衛の兵士がひとりだけだった。バレアンやホプロンが乗っていなかったことに、ちょっとホッとする。

「リリザこそひとりなの? これ、王家の馬車なんでしょう?」

「うん。バレアン様とオペラに行ってきたんだけど、あんまり面白くなくてリリザ途中で帰ってきちゃった。バレアン様はカッコいいし権力も申し分ないんだけど、リリザとはちょーっと趣味が合わなくってね~。思慮浅いっていうか、知的さに欠けるっていうか……」

王太子側近という立場にありながら堂々とバレアンの悪口をいうリリザに、サマラは唖然とした。
自分からバレアンに近づいて后候補にまで上り詰めたというのにまだ不満があるとは。リリザの果てのない貪欲さを目の当たりにして、サマラは思わずドン引きする。

「……それならバレアン殿下とお付き合いするのやめたらいいのに。知的な人が好みならシャーベリン猊下だっているじゃない」

「うーん、シャーベリン様は確かにカッコいいしリリザのことが好きだけど~。ちょっと硬すぎるかなー。あの人、いい雰囲気になってもキスひとつしてこないし」

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