転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
もはや言葉も出ない。どうやらこの世界のリリザは相当な肉食系のようだ。王太子を手玉に取りながら他の男もしっかり視野に入れている。

サマラがすっかり呆れていると、リリザが「それより」とにっこり目を細め身を乗り出してきた。

「レヴって素敵だと思わない? 彼、ものすごく頭いいのよね。魔力も強いし、クールでミステリアスだし、なんたって顔もいいし」

「……はぁ?」

思わず素っ頓狂な声が出た。まさかリリザが攻略対象外の男にまで目を付けるとは思わなかった。
しかもレヴは主人公補正の効いているバレアンたちと違って、リリザにまったく甘い顔をしていない。これっぽっちも好意を抱いてないだろう相手にまで手を伸ばそうとは、さすがに恐れ入った。

「ねえ、サマラってレヴと仲良しでしょ? リリザと彼のこと、取り持って欲しいな~」

「なっ……なんで私が!?」

馬車の狭い室内に、絶叫のようなサマラの声が響く。けれどリリザは怯む様子もなく、可愛らしく小首を傾げて見せた。

「だって、サマラはリリザのお友達でしょ? お友達は助け合わなくっちゃ」

リリザを友達だと思ったことなど一度もないが、面倒なことになりそうなのでそこは黙っておく。だからといって彼女の頼みを聞く気は毛頭ないが。

「……悪いけど、それは出来ないわ」

首を横に振ったサマラに、リリザは当然「え~なんで~?」と不満をあらわにした。
しかし協力しない理由を聞かれると、サマラは困ってしまう。なぜなら自分でも上手に言葉に出来ないのだから。

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