転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
ぼんやりと霞んでくる視界に、下卑た笑いをする大柄な男の集団が見えた。

(これ、マジでヤバい……。……助け……て……)

意識を失う直前、サマラは胸のペンダントを引きちぎって水の流れる側溝に落とした。
大切な人に、一縷の望みを託して。



「おい、起きろ!」

髪を引っ張られる痛みで、サマラは強制的に目を覚ませられた。まだ朦朧としている視界には、醜悪な男たちの顔が映る。

「……っ!?」

驚いて思わず顔を背けようとしたが、前髪を掴まれて無理やり顔を上げさせられてしまった。
叫びたくても布を噛まされているので声も出せず、暴れたくても手足も縛られている。これでは魔法を使うことも出来ない。
どうやらここは悪漢たちのアジトのようだ。薄暗い小屋に、四、五人の男の姿が見える。

「おら! ボスに顔をよく見せるんだ!」

サマラの髪を掴んでいる男がそう怒鳴る。髪を引っ張られる痛みに眉を顰めながら前を見れば、頬に傷痕のある強面の男がサマラの顔を覗き込んでいた。

「顔は悪くねえが赤髪じゃあな。金髪じゃなきゃ東の国には高く売れねえんだよ」
「さいですか。じゃあこいつの親から身代金でも取りますか? このナリ、かなりいいとこの貴族の娘でしょ」
「やめとけ、兵士でも出てきたら厄介だ。仕方ねえ、奴隷として南の国へ売っぱらうか」

目の前で交わされる恐ろしい会話に、サマラは脂汗を滲ませる。
この男たちは人さらいだ。サマラをどこに売るかの算段をしている。しかも。

「奴隷ですか! じゃあ傷物にしちまってもかまいませんね! へへっ、せっかくだから売っぱらう前に美味しくいただきやしょうぜ、ボス!」

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