転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
地面が激しく揺れ、木の床がミシミシと軋んだかと思うと音を立てて裂けた。
裂けた床から勢いよく飛び出してきたのは、巨大な樹の根だ。樹の根はまるで目があるかのように男たちに向かって伸び、その体を打ち払う。

驚きで見開いたサマラの目に映ったのは、壊れた壁の向こうに立つ人影だ。金色の瞳が、ランプの明かりを映しこんで揺れている。

(……レヴ……)

ヤナギの杖を持ったレヴの姿が、涙で霞んで見える。
すると、レヴが手にしていたペンダントから飛び出してきたマリンが駆けつけ、サマラの猿轡と縄を解いてくれた。

「大丈夫? サマラ」

「ありがとう、マリン。助けを呼んできてくれたのね」

「うん。『レヴ、助けて』ってサマラの気持ち、ちゃんと伝わったから」

「えっ……そ、そう?」

マリンに言われて、サマラは顔を赤くする。確かに心の中で助けは求めたが、誰かを指名したつもりはなかった。けれど主の気持ちを共有できる使い魔のマリンには、それが誰に向けられたものだったのかわかっていたのだろう。

拘束をほどいてもらいサマラがホッとしていると、レヴがまっすぐにこちらへ向かってきた。

「レヴ……! ありがとう、助けに来てくれて」

感激で目を潤ませながら立ち上がったサマラだったけど、レヴの表情が険しいことに気付いてビクリと背を震わせる。
怒りを秘めた冷たい眼差し。レヴはドレスを引き裂かれボロボロになったサマラを頭から足まで見つめると、低く静かな声で言った。

「……サマラに何をした」

その問いは目の前のサマラに向けられたものではない。木の根に押さえつけられて呻いている男たちに向けられたものだ。

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