転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
「ケッ、魔法使いのガキが調子に乗りやがって……。その女は奴隷として売る前に俺たちが味見してやったんだよ。最高だったぜ、大事に育てられた貴族のお嬢ちゃんを汚してやるのは」

硬く重い木の根に骨が軋むほど床に押さえつけられながら、ボスが下卑た笑みを浮かべて言う。せめて一矢報いてやろうというボスの悔し紛れの嘘だったが、それは想像以上にレヴの気持ちを逆なでした。

「――死ね」

その短い呟きを合図に、世界が暗転した。
床も壁も境目がわからないほど濃い闇に覆われる。

「……っ!?」

突然視界が黒一色になり、全身に鳥肌が立った。何も見えないけれど、おぞましい気配が周囲を覆っていることがわかる。

「ひ、ぃ……っ」

あまりの恐怖でサマラが身を縮め硬く目を瞑ったとき、パッと瞼の裏が明るくなった。
おそるおそる目を開くと、周囲はもとの明るさに戻っていた。ただし――人さらいの男たちの姿は、どこにもない。

「レ、レヴ……」

冷徹な表情のまま立ち尽くしているレヴに、サマラはためらいながら近づき袖をそっと摘まむ。

「……今の、まさか……闇魔法……?」

信じられない気持ちで、サマラはその名を口に出した。
レヴがピクリと反応し、我に返ったように「あ……」と小さく呟いた。

「嘘でしょ……? どうして……」

サマラの手が再び震える。さっきとは違う恐怖で、心臓が嫌な高鳴りを始めた。

闇魔法――それは禁じられた魔法だ。
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