転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
魔法とは、現世と重なる常世にいる火水風土の四大精霊の力を借りて発動させるものだ。けれど、常世の奥の奥……深淵と呼ばれる場所にはもうひとつ別の精霊がいるという。それは闇の精霊とも光の精霊とも呼ばれ、天使とも悪魔とも、ときに神とも呼ばれる。

それが何なのか、誰にもわからない。なぜなら人間は生きている限り深淵どころか常世の奥にも辿り着くことは出来ないのだから。

けれど大陸の歴史には深淵に触れ〝それ〟と契約をした魔法使いがいたと、古い文献に書かれている。
桁外れの魔力、卓越した魔法の技術、妖精に愛されし魂。そして深淵を覗いても崩壊しない強い自我。千年にひとりといわれるその魔法使いは、まさに『奇跡』だ。

その奇跡もまた遥か昔すぎてもはや伝説と化していたが、十八年前、千数百年ぶりに深淵に触れることの出来た魔法使いが現れた。
それが大陸最強の魔法使い、ディーだ。

今この地上で〝それ〟の力を借りた魔法を使える人間はディーしかいない。
しかもその力はあまりにも強大で得体が知れないという理由で、大陸各国の君主が賛同し許可を得ないと使用してはいけない法律が出来ている。

……だからあり得ないのだ。
ディー以外の人間が――レヴが、闇魔法を使えるなんてことは。

「どうして……? どうしてレヴが使えるの?」

サマラも闇魔法を目の当たりにしたのは初めてだ。けれど魔法使いならば皆、これが普通の魔法ではないことぐらい五感で感じられるだろう。
そしてその影響力は、おそらく国中という広範囲にわたっている。

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