転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
魔法使いが年々減少していることを危惧し、彼らは人工的に『強力な魔法使い』を生み出そうとしていた。
しかし、魔力を持たない者に魔法使いの体の一部を移植させても、魔物とまぐわらせ子を孕ませても、赤子に常世の食べ物を与え続けても、それは目を覆いたくなるような悲惨な結果しかもたらさなかった。

そこでDanuは新たな方法に着目した。人の体に魔法を宿すのではなく、魔法で出来た器に命を定着させればいいのではないか、と――。

――実験は成功した。
ディーは己の血の結晶を核に、土くれ人形(ゴーレム)を作り出した。
強力な魔力で生み出したそれは人の赤子と寸分違わぬ外見で、魔法陣の上で産声を上げた。

自分とよく似た黒髪と金の目を持った赤子を腕に抱いて、ディーは途端に恐ろしくなった。
これはゴーレムだ。魔力を奪ってしまえばただの土くれに戻る。そうわかっていても、腕の中の赤子はまるで人間のように温かく、生きて呼吸をしている。

人が生殖以外に人を作り出すことは、世の理に反している。
ディーは己が恐ろしい罪を犯したような気がしてきて、すぐにゴーレムを消そうとした。けれど、赤子の人間らしさは恐怖と同時に愛着をもその心に植えつける。

ディーはゴーレムの赤子を消すことが出来なかった。
自分によく似た黒髪金目の子供。それはきっと、サマラが生まれる直前まで彼が夢見ていた存在だ。

この子を育てたいと、ディーはザハンに申し出た。誤った命を作ってしまったことに対する償いの意味でもあった。
しかし唯一の実験成功例である赤子をDanuが手放すはずもない。ディーの申し出はすげなく却下される。

< 162 / 200 >

この作品をシェア

pagetop