転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
『あなたは土くれを育てるより、ご自分のご息女を育てるべきではないのですかな?』

まだ若かったディーは、その言葉に返す句もなかった。血が繋がっていないとはいえ娘を領地に置いて逃げてきた自分に、他の子を育てる資格などないとわかっていた。

ゴーレムの赤ん坊はレヴと名付けられ、王都の郊外にあるDanuの施設で育てられることとなった。
レヴは人間の赤子と同じように成長し、瞬く間に魔法の能力を発揮して見せた。幼いながら普通の魔法使いを遥かにしのぐ強大な魔力と類まれなる魔法のセンスは、紛れもなくディーから引き継がれたものだ。

レヴが魔法の才能を開花させるたびに、ディーは葛藤した。
自分の能力を丸々写したような土くれ人形をこのまま成長させるのは危険すぎる。非人道的なDanuに利用されることも、レヴが自分の意志を持ち野心を抱くことも、或いは土くれの体ではいつか限界が来て魔力を暴走させることも、どれも十分な可能性がある。
そうなる前にレヴを消さなくてはという使命感が強くなる一方で、どんどん人間らしく育ち感情豊かになっていくレヴを消すことなど出来ないという思いも強くなっていく。

使命感も愛着も、義務感も庇護欲も罪悪も。様々な思いを抱えながらディーはレヴの成長を見守り続けていた。

それは、ディーが王宮で魔法大臣として働いている間も、サマラと暮らすようになってからも、ずっと。
生み出してはいけない命を生み出してしまった罪をひとり抱えたまま。



「――アレは、俺を複製しただけのゴーレムだ。すべての魔力を奪ってしまえばただの土に戻る」

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