転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
苦悩するように険しい顔でそう語ったディーの話を、サマラは信じられない思いで聞いていた。

あの事件から三日が経っていた。
ディーの魔法で眠らされたサマラは丸二日も寝てしまい、目覚めると同時に寝室を飛び出してディーのもとへと駆けつけた。
そしてレヴのことを問い詰めたサマラに、ディーは初めて十六年前の真実を語ったのだった。

ふたりきりの居間には張り詰めたような沈黙が流れ、柱時計の時間を報せる鐘が虚しく四回鳴り響いた。
目を見開き言葉を失っているサマラから視線を逸らすように目を伏せて、ディーは話の続きを紡ぐ。

「……だが、アレは自分の意志を持ちすぎた。人間と同じように欲を持ち、人間と同じ生活を望むようになった。魔法研究所に見習いとして来たのもそうだ、アレ自身が望んだことだ。普通の十六歳と同じことがしたいと。……愚かな。アレは人目に触れていいものではない。いつか必要な時が来たら利用されるためだけに生まれた存在だというのに」

とても受け入れ難い話だというのに、サマラは納得もしてしまう。
幼い頃から不思議に思っていたレヴの境遇も、桁外れの魔力と才能も、彼が突然魔法研究所の見習いになったことも、――ここじゃないどこかへ逃げたがっていたことも。

そのことを理解した途端、どうしようもなく胸が苦しくなって涙が溢れた。

(レヴ……、レヴ……)

「お父様……レヴはこれからどうなるの? 今はどこでどうしているの?」

サマラの質問に、ディーはすぐには答えなかった。組んだ手を額にあて、重たそうに口を開く。

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