転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
その場に仰向けに倒れたレヴは、眠っているように目を閉じていた。駆けつけたサマラは瓦礫の中に座り込んで彼の頭を抱きかかえ、必死に呼びかける。

「……うるせーな、生きてるよ……」

レヴの双眸がうっすらと開き、口もとが浅く弧を描く。

「レヴ……!」

彼が無事に生きていた嬉しさでサマラの瞳から涙が溢れる。
そんなサマラを見てレヴは目を細めると、片手を持ち上げて涙を拭ってくれた。

「お前って、気が強いくせによく泣くよな……」

「馬鹿。レヴが心配だから泣くんじゃない」

「俺のせいかよ……。そっか。……心配かけてごめん」

「うん。……これからはずっと一緒に笑っていようね」

その言葉に、レヴが切なそうに微笑む。そして。

「……ごめん。『これから』はもう……無理みたいだ……」

サマラの涙を拭っていた手が、ポトリと落ちた。

「え?」

何が起きたのかわからず、サマラはただ目を瞠る。
地面に落ちたレヴの右手。それは手の形をした土で、サラサラと砂になって崩れていった。

「せっかくお前と所長が助けてくれたのに……闇の精霊に魔力全部食われちゃったみたいだ。魔力がなくちゃ、俺ってただの土くれだからさ……。ごめん。ふたりでどこまでも行こうって言ってくれたのに、叶えられそうにないや……」

悲しそうに笑うレヴの体が、だんだんと崩れていく。
サマラは腕に抱えた彼の体が、古い土壁のように崩れていくのを感じていた。

「な……んで……? やだよ、こんなの……」

声を震わせるサマラの後ろから、足音が近づいてくる。
ディーはサマラの隣に立つと、口惜しそうに眉をひそめて言った。

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