転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
「……レヴはゴーレムだ。自分の意志を持ち人間のように振舞っても、命と体を保っているのが魔力であることに変わりはない。魔力が尽きれば土に還る」

サマラは勢いよくディーを振り返ると、「だったら!!」と焦りと怒りを滲ませた口調で叫んだ。

「だったらお父様が魔力をわけてあげてよ! お父様の魔力でレヴは出来てるんでしょう!? レヴを……レヴを助けてよ!!」

ディーに向かってこんなに取り乱した態度を見せるのは初めてだった。
けれどディーは理不尽な怒りをぶつけられても反論するでもなく、ただ黙って首を横に振る。

その姿を見てサマラも理解する。ディーももう、魔力が残っていないのだ。
レヴの体を闇の精霊から救い、深淵に行ったサマラを導き加護するには魔力の全てを解放する必要があった。人間離れした業をふたつ同時にこなしたのだ、これ以上を望むのは無理が過ぎる。

サマラは俯くと唇を噛みしめて言葉を失った。大粒の涙だけがポトポトとレヴの体へ落ちていく。

「泣くな、笑え。俺、お前が笑ってるのが好きなんだからさ。……最後に、人間みたいに生きられてよかった……サマラを好きになって、未来を夢見られて……ありがとな」

「レヴ……っ」

崩れていくレヴを、サマラはどうすることもできない。
腕に抱いた体は砂になって流れていき、どんどん軽くなっていく。切なく微笑むレヴの顔は、半分以上がもう欠けていた。

(こんなの……こんなの嫌だよ! どうして私はレヴを救えないの? ディーの本当の娘じゃないから? 悪役令嬢だから? 主人公じゃないから? だったら私はなんのためにこの世界に転生してきたのよ!)

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