転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
彼はもう魔力が尽きても命を失わないし、禁忌の存在でもない。愛の奇跡により生まれた、ひとりの人間なのだ。

当然レヴもサマラも泣いて喜んだし、ディーも口にこそ出さなかったが歓喜に打ち震えた。十六年間背負い続けてきた罪から解放される日が来るとは思わなかったのだろう。

さらに、サマラが『奇跡の光』を発動させたことは、事態を予想外に好転させることとなった。

本来『奇跡の光』は『奇跡の子』だけが使える力だ。それをサマラが使えるようになったことで立場が危うくなるのはリリザである。

レヴを魔人化させたうえ尻尾を巻いて逃げ、おまけにサマラが『奇跡の光』を使ったことで『奇跡の子』としての面目も丸潰れになり、さすがのリリザも危機感を覚えたようだ。

リリザはすぐさまサマラたちのもとへ来て、『奇跡の光』を発動させたのは自分だということにして欲しいと頼んできた。

とんでもなく都合のいい話にサマラは憤慨しかけたが、少し考えて交換条件を持ちかけることにした。それは――レヴを救うため、架空の敵をでっちあげることだ。

レヴが甦り人間になったところで、闇魔法を使ったことと魔人化して王宮の塔を破壊した事実は消えない。

しかし、幸いなことに外部の目撃者はいないのだ。闇魔法を使ったときはサマラしか見ていなかったし、彼が魔人化した瞬間を見たのもサマラとリリザだけだ。魔人化が解けるときも、ディーが被害を広げないよう結界を張っていたのが幸いして、周囲に人はいなかった。

四人は口裏を合わせることにした。
闇魔法を使ったのは架空の人物〝謎の魔法使い〟で、魔人化したのもその人物だと。
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