転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
妖精なので本来なら魔力を持たない人間には姿が見えないが、それではサマラが生活するのに不便だということで、ディーの力で現世に姿を現せるようにしている。妖精は見た目を自由に変えられるので、メイドはお仕着せを、執事は燕尾服を、料理人は白衣を着ており、人間と変わらない。きっと何も知らない人間がアリセルト家の屋敷に来ても、居心地がいいと思うだけで使用人が皆妖精だとは気づかないだろう。

ただしブラウニーたちは寡黙な仕事人だ。契約には従うが、サマラに愛情を説いたり、わがままを矯正するほどの干渉はしないし、流行や人間界の事情にも疎い。
ディーが人間のジョナサンを雇っているのは、それを補うためなのだ。……もっとも、ジョナサンにもサマラのわがままはどうにもならなかったけれど。

「ジョナサン、おとーさまはどこ?」
「東の庭園のオークのヤドリギの所にいらっしゃいますよ。カレオ様もご一緒です」
「ありがとう、行ってくるわ!」

ちょうど庭園の入口ですれ違ったジョナサンに尋ねて、サマラは東の庭園を目指す。
広大な敷地を有するアリセルト邸。その敷地の四分の三は木と草花の生い茂る巨大な庭園だ。

豊かな植物は妖精が好むだけでなく、どれも薬や魔法の道具を精製するのに欠かせない。年に数回ディーがよこした使者が庭から必要な植物を採取し、王都の魔法研究所へ運んでいた。
今までのサマラにはうっとおしい雑草と雑木林にしか見えていなかったが、魔法の図鑑を読むようになってからはこの庭が宝の山だとようやく理解できたのだった。

「おとーさま! おと……」

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