転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
ヤドリギの樹の近くまでやって来たサマラはディーの姿を見つけ目を輝かせたものの、その光景にハッとして口を噤む。
ディーは見知らぬ女性と話していた。髪の長い上品そうな女性だ。薄緑色の大きなショールに身を包んでいる。

（だ、誰……？　お客様が来てるなんて聞いてないけど？　っていうか、随分親しげじゃない？）

女性と話すディーは笑顔ではないものの、随分と穏やかな顔をしている。彼のこんな表情は初めて見た。
なんとなくつまらない気分になったサマラは無意識に頬を膨らませた。このまま走っていってディーの足もともに纏わりつきたい衝動に駆られるが、それはあまりにも不躾だと自分を嗜める。すると。

「あれ、サマラ様じゃないですか。閣下を探しに来たんですか？」

近くの花壇に腰掛けていたカレオがサマラを見つけ、こちらへやって来たかと思うとヒョイっと抱き上げた。彼はサマラを見つけるとこうしてすぐに抱っこしてしまう。

「カレオさま！　あ、あの」

抱かれたままスタスタとディーの所まで連れていかれて、サマラは内心焦った。女性と親しくお喋りしているディーのもとに行くのは、なんとなく嫌だ。

「はい、閣下。お待ちかねのサマラお嬢様ですよ」

そう言ってカレオはディーにポンとサマラを手渡した。いい加減このシチュエーションにも慣れてきたのか、ディーもためらうことなく受け取ってそのまま抱っこの体勢になる。

「来たか。もう今日の座学は終わったのか」

「は、はい。終わりました……」

ディーの態度はいつもとなんら変わりない。特に女性と親しくしていたことをサマラに見られ、気まずく思ったりしていないようだ。

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