転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
（ていうか、お客様にご挨拶しなくていいのかな？）

サマラは振り返ってチラリと女性の方を見やった。黄緑色の髪をした女性はニコリと微笑み、「お利口ね。私が見えるようになったのね」と口にした。

「え？」

そのとき、舞い上がるようにフワッと風が吹きヤドリギの枝がさざめいた。そして瞬きする間に女性の姿は消え、「可愛い小さき者。あなたの未来が良きものでありますように」と声だけがどこからか聞こえた。

サマラはポカンとしたあと、頬をカァっと赤く染めた。あの女性は人間じゃない、ヤドリギの精だとやっと気づいたのだ。

（うぅ……、まだ常世と現世の区別がうまくつかない……）

魔力が未熟なうちは、ようやく妖精の姿が見えるようになっても人間と見分けがつかないことが、ままある。サマラはまだまだ自分が魔法初心者なことを痛感する。

「ヤドリギの精とお話していたんですね……」

「そうだ。これから出かけるから、占ってもらっていた」

ヤドリギの精は子供が好きで未来を見る力がある。どうやらディーはそのことを話していたようだ。

なんとなくサマラがホッとしていると、隣に立っていたカレオがやけにニヤニヤしながら頬をつついてきた。

「俺には見えないけど、ヤドリギの精って美人なんでしょう？　サマラ様、もしかして閣下が美人とお話しててやきもち焼いてたんじゃないんですか？」

「なっ……！？」

ズバリ心の中を言い当てられて、サマラの顔が真っ赤になった。
< 40 / 200 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop