転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
確かに、あの女性が妖精とわかるまでサマラの胸はやけに落ち着かなかった。原因がわからなかったが、カレオに指摘されサマラは自分がやきもちを焼いていたことを理解したのだった。

「……なんだそれは、子供相手に」

理解できないとばかりに眉根を寄せるディーに、カレオはますます可笑しそうに目を細める。

「小さな娘が父親を取られるのを嫌がるのは万国共通、世界の常識ですよ。女の子はやきもち焼きなんです。大好きなお父様が他の女性や子供を可愛がるのはつまらないものなんですよ」

「馬鹿馬鹿しい」――と言いかけたディーは、サマラが耳まで真っ赤にして肩口に顔をうずめていることに気付いた。彼の表情が呆れのものから戸惑いに変わっていく。

「ほら、閣下。『サマラが世界一大好きだよ』って言ってあげないと。ね、サマラ様」

「もー! カレオさま、うるさい! 私やきもちなんか焼いてない!」

恥ずかしさのあまりサマラはこぶしをブンブン振り上げて叫んだ。けれどクスクスと笑うカレオに小さなこぶしは届かない。
ディーは暴れるサマラを地面に置くと、頭をポンと軽く撫でてからそっけなく言った。

「帽子を取ってこい。街へ出かけるぞ」

「えっ! 私も? おとーさまと一緒に?」

「そうだ」

恥ずかしさでふくれっ面をしていたサマラの顔が、たちまちパァッと輝く。ディーとどこかへ出かけるなど初めてだ。

「嬉しい! おとーさまとお出掛け! おとーさまとお出掛け!」

ピョンピョンと飛び跳ねていると、サマラの喜びにつられたのか風の精と花の精も周りに集まって飛び跳ねる真似をしてきた。

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