転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
そう説明しながら指輪をはめてくれようとしたカレオに、サマラはびっくりして一瞬手を引いてしまった。

「だ、駄目ですよ！　そんな大事な指輪は私ではなくカレオさまのお子さまにあげなくっちゃ！」

カレオは秘密にしているが、彼は今は亡きリンピン王家の生き残りだ。リンピン王家に代々伝わってきた貴重な指輪を、サマラが受け取るわけにはいかない。

けれどカレオは困ったように少しはにかんで言う。

「いいんです。俺はサマラ様に受け取ってもらいたいんです。俺は結婚する気もないし、子供を残すつもりもありませんから。それよりも俺は今自分が持っている中で一番の祝福を、サマラ様にあげたいんです」

そんなふうに言われては、サマラも無碍に断れなくなってしまう。

（そういばゲームでもカレオは三十三歳まで結婚してなかったっけ。ゲームでは滅亡した王家の血を引くことに色々葛藤を抱えてるみたいだったけど……子孫を残す気がないなんて）

なんだか切なくて複雑な気持ちになるが、目の前のカレオの顔の顔を見ているとやたらなことは言えないと思う。彼なりに深く考えて出した答えなのだから。

「……ありがとうございます、カレオさま。大切にしますね。……でも、もしもこの先カレオさまが恋をして結婚したい人が出来て、それでお子さまが生まれたら、そのときは指輪をお返ししますね。そのときまで、大切に貸してもらいます」

手を差し出し直したサマラに、カレオは「俺の恋の心配までしてくれるなんて、サマラ様はおませだなあ」と頬を染めて笑った。

そしてサマラの手を取りゆっくり瞼を伏せると、「あなたに満天の幸福を」とリンピン語で祈り、小さな指に指輪を通した。


< 91 / 200 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop