転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
午後も三時を過ぎると、ようやく来客が途絶えた。
自室の居間に積み上げられたプレゼントの山を見て、サマラは幸福を噛みしめ嘆息する。
去年も貴族や領地の町長らから贈り物はたんと届いたが、ちっとも嬉しいとは思わなかった。それもそうだ、サマラはその送り主たちの顔すら知らないのだから。
単なる儀礼で贈られてきたプレゼントと、よく知った人が心を籠めて贈ってくれたプレゼントとではこんなにも嬉しさが違うのかと、しみしみ痛感する。
「たくさんの人にお祝いしてもらえて、幸せだなあ……」
サマラは自分がサマラで幸福だと改めて思った。
去年の九月、約一年前に前世の記憶を取り戻したときには自分が悪役令嬢のサマラだということに軽く絶望も覚えたが、今では微塵もそうは思わない。
父と娘の掛け違えたボタンを直せば、サマラの人生はこんなにも明るく満たされたものだったのだ。
「……よかったね、サマラ」
誰にも聞こえない声で呟いて、サマラはそっと自分の胸を手で押さえる。
誰にも味方してもらえない嫌われ者で孤独なサマラはもういない。
そのことが涙が出るほど嬉しくて、目尻をそっと指で拭ったときだった。
トントンと窓をノックする音が聞こえて、サマラは耳を疑いながら振り向いた。
「えっ!?」
ここは二階だ、窓をノックなどあり得ない。
しかも、振り向いた先に見えた光景はさらに信じられないものだった。
「よっ」
「!? え? えぇっ!?」