転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
なんと、窓の外に以前ピクシーの罠から助けてくれたあの男の子がいるではないか。サマラが目を白黒させながら駆け寄って窓を開くと、彼は宙にフワフワと浮いていた。

「え? えっ? なんで浮いてるの? こわっ」

「何言ってるんだお前。風の精の力を借りれば難しいことじゃねーよ」

フワッと下から強風が吹きあげたと思ったら、男の子は「よっと」と軽い口調で言いながら窓から侵入し部屋に着地した。久々に会う彼は相変わらず黒い外套を羽織っており、大人びている。

(すご……、風の精をここまで自由に操れるなんて大人でも滅多にいないのに)

サマラが感心してマジマジと男の子を見ていると、彼はニヤッと口角を上げた。

「なんだよ、そんなに見つめちゃって。そんなに俺に会いたかったのか?」

「はぁ!? 違うし! っていうかどうして私の部屋を知ってるの!? それに、窓から入ってくるなんてふほーしんにゅーよ! 」

やっぱり彼は人を煽る天才だ。一瞬で我に返ったサマラは、顔を赤くして言い返す。

「ぎゃーぎゃーうるさいな。お前が誕生日だって妖精が噂してたから、せっかく俺様がお祝いに来てやったってのに」

「え……」

わざわざ誕生日を祝いに駆けつけてくれたのだろうか。サマラは嬉しくなって、怒りが一瞬で消えてしまう。

「あ、ありがと……」

素直にお礼を言ったサマラに、男の子は白い歯を見せながら「お前、ちょろいな」と笑った。そして懐から布の包みを取り出して「ほら、やるよ」と投げ渡した。

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