転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
部屋の中に視線を走らせながらレヴが言う。広く綺麗な部屋、山積みのプレゼント、傍目にはサマラはさぞかし贅沢なお嬢様に映っていることだろう。

「まあね。でも全部おとーさまが立派なおかげよ。私はまだ魔法もろくに使えないただの子供だもん」

「子供なんて誰だってそんなもんだろ」

会話しながら、レヴは考え方も大人びているなとサマラは密かに感心する。うっかりすると二十五歳の感性のまま話をしてしまいそうだ。

「そうかも。でもいつかはアリセルト家の名に恥じない魔法使いになりたいな。平和で平凡で長生きするのが私の夢だけど、でも、おとーさまが誇れるような娘になりたいって最近は思うの」

サマラの話を聞いてレヴは「お前、超ファザコンだな」と笑うと、ふと動きを止めてジッと扉の方を見た。

「どうやら、その大好きなおとーさまとやらがお前を呼んでるらしいぜ」

「え?」

驚いて耳を澄ませると、階段を上ってくる足音がかすかに聞こえた。
レヴは随分と耳がいいんだなと感心していると、窓の下からフワッと風が吹きあがって、彼は来たときと同じように窓の外に立った。

「じゃあな。その人形なくすなよ」

そう言い残して、レヴの体は風に乗ってさらに上昇する。

「あ……待って! あの! こないだはどうもありがとう!」

慌てて窓辺に駆け寄り空に向かってサマラは叫んだが、そこにレヴの姿はなかった。
いつの間にか茜色に染まっていた空を眺めて彼の跡を探すが、鳥一匹飛んでいない。まるで消えてしまったみたいだ。

「お礼……届いたかな」

呟きながらサマラが窓を閉めたとき、部屋のドアをノックする音が響いた。

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