転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
「お嬢様、お出掛けのお時間です。旦那様が玄関でお待ちです」
「わかった、今行くわ」
返事をして、サマラは急いで鏡の前で髪を整え直した。そしてもう一度窓の方を振り返り、なんとなく名残惜しい気持ちで部屋を出ていった。
ディーはサマラの誕生日に『特別な場所』連れていってくれると言ったが、そこがどこかは教えてくれなかった。
ディーと一緒にアリセルト家の馬車に乗って出発したサマラは、ワクワクが止まらない。どこか大きなレストランでも貸切って食事をするのだろうか、それともディーのことだから妖精のたくさんいる場所にでも連れて行ってくれるのだろうか。
あれこれと想像してサマラは頬を紅潮させる。
しかし。荒れた山道を馬車で走ること小一時間。到着したのはなんと、断崖絶壁が目の前の荒野だった。
「……何……?」
馬車を降りてサマラは思わず呟いてしまう。誕生日のパーティーやご馳走とは程遠い場所だ。周りには花どころか木の一本も生えておらず、殺風景極まりない。稜線に見える夕日が沈みかけた景色は綺麗だけど、まさかそれを見せたかったのだろうか。
「風が強い。これを着ろ」
呆然としているサマラに、ディーは厚手の外套を羽織らせてくれた。娘が何とも言えない表情をしていることには気づいていないようだ。
「おとーさま。えっと、あの……」
どうしてこんな場所へ連れてきたのか聞こうと思って、サマラがモゴモゴと話しかけたとき。
「下がっていろ」
そう言ってディーはサマラを後方に下がらせると、崖の方に向かって立ちヤナギの杖を空に向かって掲げた。
「わかった、今行くわ」
返事をして、サマラは急いで鏡の前で髪を整え直した。そしてもう一度窓の方を振り返り、なんとなく名残惜しい気持ちで部屋を出ていった。
ディーはサマラの誕生日に『特別な場所』連れていってくれると言ったが、そこがどこかは教えてくれなかった。
ディーと一緒にアリセルト家の馬車に乗って出発したサマラは、ワクワクが止まらない。どこか大きなレストランでも貸切って食事をするのだろうか、それともディーのことだから妖精のたくさんいる場所にでも連れて行ってくれるのだろうか。
あれこれと想像してサマラは頬を紅潮させる。
しかし。荒れた山道を馬車で走ること小一時間。到着したのはなんと、断崖絶壁が目の前の荒野だった。
「……何……?」
馬車を降りてサマラは思わず呟いてしまう。誕生日のパーティーやご馳走とは程遠い場所だ。周りには花どころか木の一本も生えておらず、殺風景極まりない。稜線に見える夕日が沈みかけた景色は綺麗だけど、まさかそれを見せたかったのだろうか。
「風が強い。これを着ろ」
呆然としているサマラに、ディーは厚手の外套を羽織らせてくれた。娘が何とも言えない表情をしていることには気づいていないようだ。
「おとーさま。えっと、あの……」
どうしてこんな場所へ連れてきたのか聞こうと思って、サマラがモゴモゴと話しかけたとき。
「下がっていろ」
そう言ってディーはサマラを後方に下がらせると、崖の方に向かって立ちヤナギの杖を空に向かって掲げた。