喉元の熱~℃~
彼女にどちらが好みの味に近いか問いかけてみると、彼女は自分の顎に指を当てて考えた後に、僕の誕生年のワインを指差して微笑んだ。
その後、彼女はメイクルームに行ってくると言って席をはずした。

彼女が選んだワインの事について考えていると、薫さんが僕の顔に顔を近づけてきて『面倒臭いでしょ?あいつ。』と小声で話しかけてきた。

「あいつって、志織さんの事ですか?」

「そうそう。昔っから小心者っていうか、石橋を叩き割ってメソメソする奴だし。」

「志織さんは、僕や飲み仲間の前ではそういうのを感じさせていないですよ。しっかり者で気配りも出来て、なのにお茶目な所があって素敵な女性だと思います。」

彼女の事を一気に話終えると、薫さんは『へー…』と意外そうな表情を浮かべていた。
薫さんはきっと志織さんと長い付き合いだから、僕の知らない志織さんの一面も知っているんだろう。
歳も違うし、僕が知らないのは仕方のない事だけれどモヤモヤとした気持ちを感じていた。
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