喉元の熱~℃~

「志織さんっ!大丈夫ですか?」

慌てて彼女の手からカクテルグラスを取り上げてはみたものの、既に空になっていた。
彼女は、何で僕が心配しているのか分からず首を傾げたけれど、彼女の瞳はトロンとしていて今にも寝てしまうんじゃないかと思う位だった。

飲み干してから酒の強さに気付いたのか、薫さんの悪口を一通り言い終えると、テーブルに突っ伏してしまう前に申し訳なさそうな顔をしながら、僕に少しだけ寝かせて欲しいと呟いて瞳を閉じた。

まだ夜は長いのに、せっかく彼女と二人だけの飲みなのに…。
不満を抱いて薫さんを見上げると、薫さんはいたずらっ子の様にペロッと舌を出すと『まぁまぁ、とりあえず5分待ってみなよ。面白いの見れるから。』と言葉を残し、滅多に手に入らないワインをご馳走するからとバックヤードに行ってしまった。

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