新人ちゃんとリーダーさん
新人バイト九頭見結愛
「聞いて、ハリーさん」
もふもふの毛布をぺらりと捲り、その中で丸まっている彼へと声をかける。
「今日ね、これからね、あの人とご飯に行くんだ」
ぴくり、丸まったままの身体が少しだけ動く。けれども起きてくれそうな気配はない。
「それもね、ふ、二人で、だよ」
緊張するよぉ~!と思ったよりも大きい声が出たせいか、再びぴくりと動く彼の身体。ゆっくりと頭を持ち上げた彼は「で?」とでも言いたげな目を私へと向ける。
「でも、ね……デートじゃないよ。だって、だってね、」
ちょん、と彼の鼻先に触れるとしかめられる眉間。起こされた上に興味のない話をされて、ご機嫌は麗しくないようだ。
「ただの、相談だから……あの人は……鬼頭さんは、好きな人がいるんだよ」
ちくしょう。
ちょん、ともう一度鼻先に触れると彼はさらに顔をしかめ、ふしゅっ!と怒りをあらわにしながら身体を丸めて、背中を覆い尽くす焦げ茶色の針をぶわりと立てた。
< 1 / 51 >