新人ちゃんとリーダーさん
 
 九頭見が持っている梅酒を取り上げて、先に置いていたビールの横に置く。
 え待って何で取られたの?とでも思っているのだろう。不思議そうに、置かれた梅酒を見つめる九頭見の頬をするりと撫でて、そのまま顎先へと指を滑らせる。
 嫌なら、逃げろよ。目と目を合わせ、そんな、心にもねぇ言葉を孕ませた視線を約一秒送り、逃げねぇならこれはもう同意だろうと梅酒で少し濡れている唇をぺろりと舐めた。

「っ」

 びくりと華奢な肩が揺れる。けれど、視線は真っ直ぐに向けられたままで、何か言いたげに俺の唾液で上塗りされた唇がぱくぱくと動く。
 駄目もやめても嫌だもねぇなら、いいよな。なぁ?
 目の前の、食べ頃でしかねぇ赤く熟れた唇を()んで僅かに開いてる隙間から舌を捩じ込ませれば、またびくりと肩が揺れた。

 「……っ、ん、」

 逃げらんねぇように顎先を捕らえていた手で太ももを押さえ、背もたれに乗せていた手で髪を掬いつつ後頭部を掴む。口内を舐め回し、狭いそこを逃げ惑う九頭見の舌に自身のを絡み付かせながら角度を変えて楽しんでいれば、重ね合わせた唇の隙間から甘ったるい声が漏れて鼓膜をつき抜けた。
 堪んねぇな。
 閉じるのかと思えば、予想に反して伏せ目がちになっただけのとろりとした瞳が劣情を上乗せしていく。
 出来る事ならば、手順を踏んでこいつを手に入れたかった。何せ、初恋だ。とはいえ、手段を選んでる余裕もなければ理性だって殆ど残っちゃいねぇ。

「っ、や、ぁ、」

 首筋に唇を寄せて、ちう、と吸い付けば、びくんっと一際大きくはねた柔い身体。濃く色付いたそこをべろりと舐め、上服の裾から手を滑り込ませようとしたところで、小さな抵抗に遭う。

「っあ、の、」
「ん」
「きと、さ、ん、好きな、人、」

 震える小さな手で手癖の悪い俺の手を押さえ、震える小さな声で俺の名前と好きな人と途切れながらも懸命に吐き出しているのは、言外に、こういうのは良くねぇとでも言いたいからだろう。好きな女がいる癖に他の女に手を出すなんてモラルに反する、ってか。

「……こうなってんだから、分かるだろ……そんなもん」

 心配すんな。てめぇは【他の女】なんかじゃねぇからよ。
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