新人ちゃんとリーダーさん
「……チョコレート、ケーキ」
「え」
「作って、たんです」
「お、おう、」
ぽつり。
再びこぼされた結愛の声を聞き逃さないように耳を傾ければ、彼女の白くて小さな手が、きゅ、と俺の袖を掴んだ。
「……本当は、デートの時に、家に来てもらって、食べてもらうつもりでした」
「悪かった。誤解させるようなこと言って」
「……賄い、食べちゃいましたけど、」
「……ん」
「……食べます、か……?」
「食う」
「……」
「食いてぇ。結愛の、作った、やつ」
あと、結愛も、食いてぇ。
「……帰るの、遅くなっちゃいますよ?」
「結愛が嫌じゃねえなら、泊めて」
「……別に……いいですけど」
なんて煩悩は、ごくりと飲み込んで。代わりに、「ありがとう」と、ちょっとだけ拗ねたような顔をしている可愛い可愛い恋人を抱きしめた。
ー番外編 ① 終ー