新人ちゃんとリーダーさん
「……ああ、そう、」
地を這うかのような低さに、びくり、肩が揺れる。
「分かった。もういい」
そう吐き捨てるや否や、桜雅くんはテーブルに置かれていた伝票を持って、席を立った。
すたすたと歩き去る彼の後ろ姿。それを目視した次の瞬間にようやく、彼が帰るつもりなのだと理解して、慌ててバックを掴んで立ち上がるも、視線を戻したそこにはもう彼の姿はない。
レジ早ッ。私の分まで支払ったであろう桜雅くんも早いけれど、レジの人も早いな。
なんてことを思いながら、自分の分を返さなきゃと追いかけたのだけれど、見当たらない。きょろり、辺りを見回せば、通りの向こう側の、左手へ数メートル進んだ先に彼の姿はあった。
歩くのも、速い。普段から歩くペースを私にあわせてくれていたのだろう。そんなに歩くのが速いなんて、知らなかった。走って追いかけようかとも思ったけれど、残念なことに私はこれからバイトだし、桜雅くんも家庭教師のバイトがある。元々、お昼を食べたら互いのバイトに向かう予定だったから、別にいいのだけれど。
「……すごく、怒ってる……よね……?」
どうやら私は、彼を怒らせてしまったらしい。