新人ちゃんとリーダーさん
否、らしい、なんてものではなかったようだ。
「おかえり」
「った、だ、いま……?」
「は。自分ん家だろ」
あれから、バイトをこなして、桜雅くんに連絡したのだけれど、既読スルーされるわ電話も無視されるわで少しへこんだ。
めちゃくちゃ怒ってる……!
そう気付いたところで、現状、打つ手なし。悶々とするしかない。しかしそれでも時間は進む。夜が明け、朝が来て、約束の時間が来る。指定された場所に向かった私がどんな顔をしていたのかなんてもちろん私は知らなかったけれど、相手方に「え、と、何かあったの?」と聞かれるぐらいの顔だったのは確かだろう。よもや「恋人にキレられてメッセージも電話も無視されてるんです」などと言えるわけもなく、愛想笑いで誤魔化した。話を本題に切り替え、「今日から一週間きみの家で過ごしてみて、それで決めよう」ということで話をまとめたのが、十五分ほど前のことだ。
「……ど、どう、したんですか……?」
共に帰路につき、自宅玄関前へとたどり着いたのが、およそ一分くらい前。解錠して、玄関扉を開けたらあら不思議! 恋人が腕を組み、壁に寄りかかりながらこちらを見下ろしているではないですか! なんて状況を誰が予想出来ただろうか。いやもちろん、合鍵は渡しているから全然好きに出入りしてくれて構わないのだけれど。でもやっぱり待って。散々スルーされた直後にこんな登場の仕方をされたら誰だって驚くだろう。心臓もたない。
「お……うが、くん……?」
疑問符を吐き出しながらも、一歩前へと進めば、背後でガチャンと扉の閉まる音がした。