新人ちゃんとリーダーさん
「は?」
また、一文字と疑問符のコンビが彼の口をからこぼれ落ちる。
「……ハリー……さん、の……?」
「は、はい。あ、あの、このコがお嫁さん候補の、ルビィちゃんです」
咄嗟に斜め後ろにさげて隠したお出かけ用キャリーをおずおずと身体の前に出せば、桜雅くんの視線がキャリーへと向かう。
ひょこり、キャリーの覗き窓からルビィちゃんが顔を出した瞬間、切れ長の瞳が見開かれる。けれどもすぐにそれは、彼自身の手によって覆い隠されてしまう。
「……っ、んだよ……!」
「えっ」
「ハリーさんの……ああっ! くそっ!」
「えっ、えっ」
はぁあああ。
とてつもなく長く、重苦しさをも感じさせるため息が吐き出され、俯いた姿勢のまま彼はその場にしゃがみこんでしまった。
頭上に、たくさんの疑問符が浮かぶ。一体全体、彼はどうしたというのだろうか。少し考えて、だけど分からなかったから、そろりとあいている方の手を伸ばして、ぽすぽすと彼の頭を撫でてみた。
「……見合い」
「っえ」
「結愛がすんのかと思ってた」
「っえ」
そろりと頭が上がり、視線がぶつかる。
「……良かった」
「っえ」
「結愛が、誰にも盗られねぇで」
「っ!」
ひどく安堵したような表情でそう言った彼は私の手を取って、至極当然とばかりに指先に口付けを落とした。