新人ちゃんとリーダーさん
どこまで行くというのか。
時折、背後を気にしながら、きょろきょろと辺りを見回しながら、結愛は進んで行く。そんな彼女のあとを引かれるがままについては行っているものの、「どこに行くんだ」という質問には「いやあの、ええと、」と濁されただけだった。
「っ、あの、ごめんなさい、」
「……それ、何に対しての謝罪だ」
ため息をひとつ。
聞こえるようにこれ見よがしについたわけじねぇけど、聞こえねぇようにと気を使ったわけでもねぇからか、びくっと華奢な肩が揺れて、ぴたりと歩みが止まる。
「えと、ここまで、引っ張って……きて、しまって、」
「何で」
「え」
「何でそんな慌ててンだ」
「……そ、れは、えと、」
大通りからひとつずれた、住宅街の中の道。時間的なものなのか、下校中であろう学生らや犬の散歩をしている人もいれば、ジョギングをしている人もいる。そのど真ん中で立ち止まり、お世辞にも楽しそうとは言えねぇ雰囲気を醸し出していれば、そりゃ、視線だって向けられるだろう。
ちくちくと容赦なく、至るところに刺さるそれら。しかし状況が状況だ。周りが向けてくるものは意識の外へと放り投げて、一歩分、距離を詰めた。
「結愛」
「っ」
頬に触れ、ゆるりと指先で撫でてからゆっくりと顔を持ち上げれば、視線の先にある瞳がゆらりと揺れる。
「あ、あの、やっぱりもうかえ」
「結愛」
「……っ」
なぁ、頼むから。
俺の頭の中に浮かんで、一向に消えやしねぇ言葉を吐くのだけはやめてくれ。