造園家は御曹司に求婚される
「えっ!?本当に結婚してくれるの!?」

ポツリと真っ青な顔で呟いたあたしに対し、財前さんはめちゃくちゃ嬉しそうな顔をする。こいつ、女を見る目ってあるんだろうか?何でこんな男みたいなのを……。

「俺、飾らない人が好きなんだ。どんな立場であっても、どんな関係であっても、自然な姿をさらけ出してくれる人がいいんだ。柚子は自分の仕事に誇りを持っていて、誰かに媚を売ったりもしない。そんなところに惹かれたんだ」

真剣にそんなことを言われて、あたしの胸もちょっと揺れる。ほんのちょっとだけだけど。

「ねえ、お試しで付き合ってみない?」

ダメかな?と見つめられ、あたしはパッと顔をそらす。イケメンに見つめられるなんてダメだ。顔が嫌でも赤くなる。

「……お試しでならいいよ」

「やった!なら、来週デートしよう」

こんな女を好きになるなんて馬鹿みたい……。はしゃぐ財前さんを見ながらも、心のどこかではあたしを見てくれる人がいるんだと嬉しくなる。

この気持ちが恋なのか、今はまだわからない。
< 9 / 10 >

この作品をシェア

pagetop