偽婚約者の恋心~恋人のフリが本気で溺愛されています~
私は手を引かれるまま、蓮さんに着いていくと、いつの間にか、ショッピングモール内の普通なら絶対に入ることが出来ない、完全予約制の日本庭園に来ていた。何気なく話したことをちゃんと覚えていてくれたことが嬉しい。
「蓮さん、連れてきてくださってありがとうございます。」
と言うと、蓮さんは、優しく微笑んでくれた。
ビルの一角にあるとは思えないくらい本格的な日本庭園で、池もあり、美しい錦鯉が泳いでいる。時折、鹿威しの音が響き、静粛さが増す。
美しい日本庭園を二人で手を繋ぎ歩きながら、散策する。
蓮さんは歩きながら、私に分かりやすく丁寧に、藤原コーポレーションとの話し合いの内容などを詳しく教えてくれた。そして、田中先輩は、私に謝りたいと、とても反省していて、合わす顔がないと会社を退職したが、藤原コーポレーション系列の子会社で働く事になったこと、藤原さんも海外に飛ばされる事が決まり、二度と私の前に現れることはないことなど、蓮さんは自分が動いたとは一切言わなかったが、蓮さんが尽力してくれたことは聞かずとも分かった。
私はもう、何も恐れることはなく、安心して元の生活に戻れると分かった。